あれから四十年、、、

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十一月は社会人講師が大学に講義に招かれるシーズンです。


カキじいさんの出番も多くなってきました。

東北公益文科大学酒田市)、岩手大学石巻専修大学京都大学国学院大学広島大学などなど、、、と、続きます。

これでもカキじいさんの講義は人気があるそうで、どこの教室も満席になるんですよ。

カキじいさんは気仙沼水産高校卒(現向洋高校)で、大学教育を受けていません。大学の講義ってどんなものなのか?とK大学をこっそり見学することにしました。

その時のお話し。


教授は学生さんが聞こうが聞くまいが、構わずどんどん一方的に進めてゆきます。なんと七割の学生さんは寝ているではありませんか。大学の教室は寝室か?と思ってしまうほどでした。

そこで、自分は眠くならない講義をしようと心に決めました。様々な話題を次々に繰り出して、一見バラバラのようですが、実は全部繋がっている、ということに気付かせる作戦です。


どの大学でも講義の内容についてのレポートの提出があります。

作戦の甲斐あって、どの大学に行っても九割の学生諸君が「良かった」と言ってくれているようです。

もっとも、まるで漫談のよう、、、というニュアンスの感想もありますが。


教育学部 I君の場合。

「今までとは“毛色が違い”、とても親しみやすい語り口なのが良かった。芭蕉や蘇鉄(ソテツ)、大島紬(つむぎ)シャーク湾などの話は特に知的な好奇心を満たしてくれた。

さりげなく(文系の僕にとっては)難しい話も出てきたが、親しみの持てる口調と丁寧な解説のお蔭で、重要なことはあらかた理解できたように思う。

講義を受けていてこの方はすごく強い知的好奇心と向上心、行動力を併せ持っているのだな、とも感じた。

鉄分などの大切さなど改めて認識したのはもちろんだが、家と大学を往復するだけの生活をしている今の自分に対して、もっと行動的、積極的に生きてゆけないものだろうか、という何とも言い難い後悔にも似た感情を抱いた。

以後、牡蠣を食べる度にこの方の事を思い出すような気がする。」


面接試験を受けた気分ですね(笑)。


医学部Kさんの場合。

「今回の授業は今までで一番“おもしろかった”です。牡蠣や海苔(のり)の話がとても身近で分かりやすかったです。

川をきれいにすることがとても大切で、でもそれを行うことでいろんなことにプラス面が表れて感動です。

食生活の話をくくり付けて話していただいたので、環境保全への意欲もわきました。

本当に“おもしろかった”です。」



綾小路きみまろと勘違いをしたのでしょうか(笑)。

「牡蠣を作り続けて五十年!」が彼の決め台詞「あれから四十年!」に聞えたのかも知れません。

畠山重篤


まもなく舞根湾はカラフルなカーテンに囲まれます(舞根湾、朝日)