「わくわく」

mizuyama-oyster-farm2010-09-21

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この夏休み、京大ポケットセミナー で水山養殖場 を訪れた学生さんたちから感想文が届き始めました。


男子学生顔負けで木を植えていた林学のOさんにとっても、衝撃的な体験だったようです。

子どもの頃から外で遊ぶことがなく、虫や魚に触れることは殆どなかったそうです。

ところが、海の様々な生き物にさわったり、生まれて初めてという海釣りでメバルやアナゴを釣り、しかも朝食に焼いて食べるという経験をしたのです。

人間が食べているものは、すべてが生きているんだ、そう実感したそうです。

そして、柞(ははそ、ナラ)の苗を植えるということは、海を通してこの国全体に関わっていることだったんだ、と気が気付き、「今になって、わくわくしてきました」というのです。

大学に入り、何を勉強したらいいか、迷いがあったようですが、方向性がどうやら見えてきたようです。

Oさんの頭の中で、何かがひらめいたのでしょう。「わくわくしてきた、、、、、。」 いいですね。


カナダからも嬉しい手紙が届きました。

八年前、仙台の女子中学生Sさんがカキじいさんの本を読み、「カキ養殖の現場を見せてください!」と、たった一人でやって来ました。

驚きと嬉しさを感じながら、養殖いかだに船で連れてゆき、カキを食べさせたり、プランクトンを採取して見せたり、コップに移して飲ませたり、、、、、。

それから数年後、東京水産大学に入学し、プランクトンの勉強をしています、とのお便りをもらったのです。

時々、文通をしていましたが、やがて、大学院はアメリ東海岸の大学へ行きます、とのことでした。

研究したことが水産学会誌に載りました、と論文をもらいました。(残念ながら英文だったのでほとんど読めませんでしたが、、、。)

修士課程を終えて帰国し、北海道の海洋調査会社で働いている、とのお便りがありました。

二年働いていたようですが、やり残したものがあるとの思いが断ち切れず、カナダのヴィクトリア大学海洋専攻博士課程に入学したというのです。

プランクトンの昼と夜の分布行動がテーマで、目下、研究に没頭しているそうです。



この天井のない舞根湾の自然学校が、彼ら、彼女らの胸の「わくわく」を大きく膨らませることができたのかも知れません。そう思うと、カキじいさんは何とも言えない幸せな気持ちでいっぱいになるのです。


畠山重篤


舞根湾という、この自然学校