さんまは気仙沼に限る!
今年で十五年目を迎えた「目黒のさんま祭」を楽しんできました。
山手線目黒駅を降り、改札を出ると駅員さんが案内に立っていました。地域を挙げてのすごいサービスですね。
だらだらとした権之助坂を下って行きますと沢山の幟(のぼり)が並んでいて、赤で「“気仙沼”目黒さんま祭」と印されています。
どことなくサンマを焼く匂いがして来て、人通りが少なければ気仙沼の町を歩いているような風情です。
会場に近い目黒川沿いの路に入りますと、人、人、人、、、、です。子供からお年寄りまでさんまを食べるために並んでいるのです。
二キロも続いているそうですから、いったいいつになったら食べられるのでしょう。
杖を突いているおばあちゃんに聞きますと、もう四時間もこうしているというのです。
何でも、一番乗りの人は昨晩八時から並び、十四時間かかって食べたそうです。それでも「やっぱり気仙沼のサンマは最高に旨い!」と言ってくれるのですから有難いものです。
気仙沼側の実行委員長、松井敏郎さんはカキじいさんの友達です。
松井さんとカキじいさんは気仙沼の“変人”というあだ名があります。どちらも、スタートの時は「変なイベント」と言われたものの、それを長年続けているからです。
その甲斐もあって、とうとう九月十八日、東京都目黒区と気仙沼市は友好都市協定を結び、これからも交流を深めていくことになったそうです。
ニコニコ顔の松井さんに案内され、田道広場公園に足を踏み入れました。
もうもうたる煙です。ねじり鉢巻きや、姉さんかぶりの「焼き師」たちが百人ほど並び、その前で東京弁と気仙沼弁が入り混じった会話をしています。
「いますこす、まってでけらいん!うんとうんまぐやいでけっがら、、、」
(訳:今少し待っててください、うんと旨く焼いてあげますからね!)
「まあ、いい匂いだこと!早く食べたいわ!」
、、、こんな調子です。
「びずんがきたらばでっけなのをやぐのっさ!」、、、そう教えてくれた知人もいました。
(訳:美人が来たら大きいのを焼くんだよ!)
大分県からは応援にカボス部隊が来ていて、熱々のサンマに何とも言えない風味を添えています。
松井さんの本業は「看板屋さん」なのですが、美大在学中、目黒でアルバイトをしていて、古典落語を聞き、気仙沼と目黒を結びつけるアイディアが生まれたそうです。
区民センターホールで、落語「目黒のさんま」春風亭柳太郎の一席があり、カキじいさんも人生初めての生の落語を楽しみました。
子どもたちも大勢聞いていて、「さんまは目黒に限る!」の落ちに大きくうなづいていました。
きっと家に帰って、四時間ならんだ苦労を笑い飛ばしたことでしょう。