京大ポケットセミナーにて(前編)

mizuyama-oyster-farm2010-09-02

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八月末、今年も京都大学ポケットセミナーの学生諸君が舞根湾にやって来ました。

京都大学では少人数の新入生の学生グループに教官が同行してフィールドワークをするシステムがあります。

題して「ポケゼミ」。


七年前、京都大学では林学から水産学までを統合した機構、フィールド科学教育研究センターを立ち上げ、世界で初めてと自負する「森里海連環学」という新しい学問分野を創り出しました。


初代センター長、田中克先生が「ヒントは森は海の恋人運動なんです」と語ってくれたのを思い出します。


学問の世界も、自然は全部つながっているはずですが、森林学、農学、河川生態学、水産学等に分かれていて、例えば森林学者と水産学者が交流する機会はほとんど無かったのだそうです。

三陸のカキの漁師さんたちが川の上流の山に木を植えていると知った時は、とてもショックでした」。先生はそう述懐しています。

植林しているだけでなく、川の流域の小中学生を海に招き、環境教育の手助けをしていることに、とても共感を得たそうです。



そんなことから、長野県黒姫山で青年達に山の教育をしている作家のCWニコルさんと、カキじいさんに京都大学フィールド科学教育研究センター社会連携教授への就任要請があったという訳です。

森里海連環学共通リレー講義と、ポケットセミナーを受け入れ学生たちと学ぶことが主な役割です。


カキじいさんの仲間たちからは、「長靴をはいた教授さま」だと冷やかされています。



今年は文学1、林学2、地球物理学1の四人です。全員この春入学したばかりの一回生。

なんと文学部のK君はお隣岩手県は盛岡出身、林学のOさんのお母さんは気仙沼のお隣、岩手県の一ノ関出身だそうです。

引率は二代目センター長、白山義久教授です。干潟のベントス(微生物)研究の第一人者です。

学生諸君に話を聞いてみると、ずうっと受験勉強で、自然の中で学んだことは殆どなく、なんと魚釣りの経験は全員が全く無いというのです。



ポケゼミの恒例、新入生たちを歓迎するための「ウエルカムランチ」をご馳走します。カキばあさん特製「ほたてカレー」です。これでもかとばかりに今が旬のホタテの貝柱が入っています。

中には三杯もおかわりする大食漢(?)もいました。今年も好評のようで、カキばあさんも一安心。


お腹一杯になって、爽やかな夏のリアスの潮風にあたると、やっと元気が出て来たようです。



さあ、諸君!用意はいいかな?

畠山重篤


夏、夜明けの舞根湾