海なし県の先生のため息

mizuyama-oyster-farm2010-08-18

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海なし県、岐阜県岐阜市の中学校の先生がカキじいさんに会いに来られました。


半年も前から約束していたのです。社会の先生でこの十一月に公開研究授業があり、「森は海の恋人」運動をテーマにしたい、というのです。

県内外から五百人も集まる公開授業で、教員にとって真価を問われる正念場でもあるそうです。

特に社会科は、どんな「ネタ」をテーマにするかが勝負になります。



実は今春、海なし県の岐阜県で国家イベントである「豊かな海づくり大会」が開催されていました。


鵜飼で有名な長良川は、伊勢湾に注いでいますね。つまり、「岐阜の森が伊勢湾の生物生産と深い係りがある」というコンセプトの国家イベントが開催されるようになったのです。

漏れ聞くところによりますと、岐阜県知事さんが森は海の恋人運動に関心を寄せ、海に面していない県で初めて「豊かな海づくり大会」を決意したということです。



十数年前、筑波大学付属小学校の社会の先生が取材に来られ、公開研究授業のテーマになりました。

カキじいさんも授業を拝聴しましたが、すごい人と先生方の熱気に圧倒されたのをはっきりと憶えています。

その後、各地の学校でこのテーマが使われるようになりました。マスコミ用語でいう「手垢(てあか)のついた」テーマというところでしょうか。


しかし、「森は海の恋人」という言葉の意味は今大きく進化、そして深化しています。手垢、、、などと言っている方々は、子供たちと一緒にもっともっと学習しましょう。



この岐阜県の先生も地理の先生なのに、リアス式海岸の「リアス」の意味や語源、スペインはガリシア地方の本家本元の地形のことなど、全く知りませんでした。

また岐阜市にはサラマンカホールというパイプオルガンで有名な音楽ホールがあります。

サラマンカ大学はスペイン最古の大学で、セルバンテスコロンブスが学んだ大学です。壁一面に、ほたて貝の装飾がある建物が多い街です。ほたてとリアス式海岸についてもレクチャーをしました。(詳しくは拙著「リアスの海辺から」をご参照下さい)


船に乗せ、海から陸側を見せました。森が海に垂れ下がっているようだというのです。

岐阜に近い海は愛知の知多方面だそうです。濃尾平野が広がり、海から森は全く見えないのだそうです。


「どろぼうかつか」連中にも面談させました。



ああ、子供たちに見せてやりたい、、、、、、、、驚きとともに、ため息ともとれぬ声をあげられていました。



それを聴いてカキじいさんは、この先生ならきっといい授業ができる、そう思ったのでした。

畠山重篤


※今年十月、仙台で全国中学校社会科研究大会が開催され、カキじいさんが基調講演をすることになっていますが、なんとこの先生が岐阜県代表で出席することになったというのです。準備でお忙しい時期でしょうが、またお会いできるのが楽しみです。


カキじいさんは今日も森と海の寄り添いを静かに見つめています