『カキじいさんのブルターニュ紀行 (親愛なるパトリックさん 編)』

2012年10月4日

ブルターニュ北部、カンカル、サン・マロ、モン・サン・ミシェル湾での楽しい滞在を終えて、カキじいさん御一行は今日から南進、いざブルターニュ南部地方、キブロン湾を望むカルナック(Carnac)、ラ・トリニティ=シュル=メール(La Trinite-sur-Mer)へ。

東日本大震災後、津波で被害を受けた水産業の復興と「森は海の恋人」運動をご支援いただいているルイ・ヴィトン社の創業者、ルイ・ヴィトン家の五代目当主パトリック・ルイ・ヴィトンさんが待っていてくれるはずです。


見渡す限りの広大な干潟と草木、畑の続くブルターニュ北部の風景から変わって、南部の海辺へ近づくにつれ石造りに白壁、二階の出窓がとっても可愛らしい街並みが見えてきました。季節は秋深まっていますが、夏場のここカルナックやトリニティの街は、パリなどからバカンスを楽しみに来る人々で人口が何倍にも増して大変な賑わいだそうです。

ホテルに案内されると、舞根湾から来た私達にとっては絵に描いたようなリゾート。目の前には白い砂浜が広がり、人々は犬を連れてのんびりと海辺を散策しています。カキばあさんも「新婚旅行気分」?!か、何だか落ち着かない様子で「いいんだべが?」。


と、海辺の道で出迎えてくれたのは、真っ赤なズボンに可愛らしいベスト、ニット帽でにっこり顔のパトリックさん?!。

イカーで海辺にごく自然に現れた彼に、カキじいさんも「そりゃあ地元だもんなあ、びっくりしたよ!」。古い友人が久しぶりに再会したかのように、二人は満面の笑みで握手を交わすのでした。

この晩はパトリックさんはじめ、明日地元のカキ養殖場などをご案内していただくエルベさんやルイ・ヴィトン本社やジャパンの皆さん、馴染みの皆さんが、パトリックさんお勧めの海辺のお店でパーティーを開いてくれました。地元の牡蠣や海産物はじめ、部屋の暖炉でグリルする山盛りのロブスター!?今回は「食べ歩き紀行」でもありました。

ヴィトン社の方から教えていただいたフランス語で「親愛なる、、、パトリックさん、、、へ」、、、とサインした『カキじいさんとしげぼう』(フランス語版)を手渡し、さあ、再会を祝して乾杯!

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「カキじいさんとしげぼう」(フランス語版、カキの森書房) <他に日本語版、英語版、ロシア語版>
カキの森書房(水山養殖場) http://mizuyama-oyster-farm.com/kakinomori-books.html


パトリックさんとカキじいさんが初めて出会ったのは震災の年の六月、パリ郊外のアニエールのパトリックさんの鞄工房でした。
フランス政府、フランス料理界はじめたくさんの皆さんが、震災からの復興と日本の食材を安心してもっと取り入れようとPRするために開催されたチャリティー・ガラ・パーティーに出席の折、開催協力のルイ・ヴィトン社から、是非会ってほしいとお招きを受けてのことでした。

深い森の中の工房でお会いした二人は、何故かすぐに意気投合。カキじいさん曰く「何だか昔っから知ってる人みでえな感じなんだよなあ、、、。」その時のお話も含め、昨年九月の二人の対談の様子はこちらに。 
>> 【カキ、再生へ】(1)40年前の「恩返し」ルイ・ヴィトンが支援の手 - MSN産経ニュース.pdf 直



現在もルイ・ヴィトン社のスペシャル・オーダーを手掛ける根っからの鞄職人、パトリックさんは、森と「牡蠣」を愛してやみません。
「カキ剥きのマイナイフを持って舞根湾へ!」とのパトリックさんとカキじいさんとの約束が果たされたのは、今年の六月、「森は海の恋人植樹祭」の直後、台風一過の日曜日でした。
津波の傷跡がいまだ生々しく残る当地方ですが、ルイ・ヴィトンはじめたくさんの皆さんのお力添えで、海とそこに暮らす人々は少しずつ少しずつ元の息吹を取り戻しています。

遠くフランスからのお客様と、仮設工場に集まるおんちゃん、おばちゃん達との楽しく感謝にあふれた、素晴らしいひと時の様子は当時の記事にも書きました。
>> http://d.hatena.ne.jp/mizuyama-oyster-farm/20120714/1342269174


「今度は私の故郷の南ブルターニュの海辺をご案内しますよ!」とパトリックさん。聞くと居ても立っても居られないカキじいさん、二つ返事で「是非!」。

ブルターニュは三十年ほど前に旅をして『森は海の恋人』運動を始めようとした切っ掛けの、気づきの場所。様々なご縁で結ばれた人々と森、川、そして海をまた旅できる機会が何とも言えず嬉しいのです。震災へのご支援の御礼も含めて、フランスへの旅がすぐに決まったのでした。


さあ、明日はパトリックさんたちと一緒に、エルベさんや地元の牡蠣師(牡蠣養殖の上手い漁師)たちに会いに行きますよ。
地元の牡蠣やロブスターにミュスカデも効いて、秋の香りが漂う海風が心地よい秋の南ブルターニュ、一日目の夜でした。

(おしまい)

※次回は、「牡蠣を愛するひとびと(カルナック、ラ・トリニティ=シュル=メール)編」です。

文・写真 畠山耕