鉄と宇宙と牡蠣
この夏、ある会で、宇宙から奇跡の生還を果たした「はやぶさ」のプロジェクトマネージャー川口淳一郎先生と同席する機会を得ました。
三陸の牡蠣漁師の私と、時代の最先端を行く宇宙工科学研究者が講師として招かれるとは、まったく前代未聞の事と思われたようです。
でも、カキじいさんはこれは面白いと、ある共通点を見出していました。
十数年前から友人付き合いをしている広島大学准教授、「クーボー博士」、あるいは「生物学界のインディー・ジョーンズ」こと長沼毅先生からあることを聞いていたからです。
長沼先生は、カキじいさんより十五才も若いのですが、「生命はどこから来たか」がライフワークの「辺境生物学」研究者です。
先生はまず、海底火山の噴火口付近の生物調査のため、しばらく潜水艇に乗っていましたが、興味は宇宙に移り、宇宙飛行士を目指したのです。
あの野口さんと一緒に訓練を受けていました。ノグチ、ナガヌマですから、NとNで同室だったそうです。
かなり上位まで残ったようですが、宇宙には行けませんでした。
長沼先生はカキじいさんとの出会いで「鉄」の面白さに目覚め、研究を開始したと仰っていましたが、最近になって気が付いたことは「この宇宙は鉄を作るための宇宙だ」ということだそうです。
その理由は、原子、中性子、陽子の関係で、説明は宇宙物理の知識がないと無理ということで、カキじいさんはあきらめました。
でも、生命と鉄とのかかわりを追い求めているカキじいさんにとって、やっぱりと思う出来事でした。
川口先生に問うてみました。ハヤブサが持ち帰った「いとかわ」の塵の中に鉄は含まれているでしょうか?、、、と。
すると太陽系の中で最も多い物質は鉄とニッケルですから、もちろんあるでしょう、とケロリと仰います。
生命体と鉄との関わりについても質問してみましたが、専門外ですからねえ、、、と、困らせてしまいました。
そこで、カキじいさんが先生に少し説明させてもらいました(笑)。
先日の新聞で「いとかわ」のものと判明したのは、微粒子の中の硫化鉄の一種が発見されたことが決め手だったとあります。(東北大の中村智樹准教授が解明しました。)
微粒子の一部は「カンラン石」で、地球の同種の五倍の鉄が含まれていたそうです。
かんらん石は英語で言うと「オリービン(olivine)」。オリーブの実に似た緑色のきれいな石です。
これが地球の、そして生命の起源と鉄の関係について、これから多くのことを語ってくれることを期待しています。
今、「鉄は魔法つかい」という本を書いていますが、話題がどんどん増えてきて困っています。
広島大学の「クーボー博士」は近々南極へ出発し、研究のため、三か月間のテント暮らしだそうです。
氷に含まれる宇宙塵を集めるのだそうです。
先生のご無事と「鉄」の研究成果を祈っています。
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