熱っつい雨

mizuyama-oyster-farm2010-08-16

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早朝からミーンミンミン、ジッージッーというセミの大合唱が続いています。

この何年間か、雨の多い夏が続き、三陸セミの声が静かでした。これで冬が寒ければ、実にメリハリの効いた、いい塩梅の自然になることでしょう。

さて、孫たちの「どろぼうかつか」観察が続いています。


なんと、いつもの水辺に近づきますと、足音を聞いてニ十匹ほどの「どろちゃん」連中が集まってきているではありませんか。人が意地悪しないことが分かるとこうして馴れてくるんだよ、と話すと、二才の孫まで大きくうなづいています。

牡蠣を割って指で身をつまませ、真っ白な身を水中でゆらゆらさせると、どろちゃん連中がさっとかじって逃げてゆきました。


「手からとった!」とみんな目を丸くしています。


どろちゃん(どろぼうかつか)、しまちゃん(しまかつか)、ギンハゼ、メジナの“こっこ”(稚魚)、おうげぇ(ウグイ)、あごに二本ヒゲがあるヒメジのこっこもいます。何十匹という磯ガニ、ヤドカリ、ツブなど生物多様性そのものです。

“パブロフの条件反射”のことを五年生、三年生の孫に教えようとしましたが、人が優しくすると自然の生き物もちゃんとわかることを知ったことだけで十分。この次にするとしましょう。

おしっこ、おしっこ!と二才の孫。自分でしなさいと五年生のお姉ちゃん。パンツを下げて、海に小便小僧です。来春から幼稚園ですから、この夏でおしっこのことも大丈夫でしょう。



カキじいさんが小さい頃、農村部から中学を卒業してすぐ、奉公に来ていた人がいました。もう八十才に近いのですが、今でもお付き合いがあります。

時々、三人の子供たちの子守をさせられていました。格言めいた話をしてくれるので不思議に憶えているのです。

「小便小僧」を見ていて、ふと思い出しました。



「ドドット、ドットドット田の淵で、田舎のアンツァン(あんちゃん)立づ小便、泥鰌(どじょう)がたんまげで(驚いて)空を向ぐ、こんな熱っつい雨降ったごとねえ」



現代っ子の孫たち反応は“イマイチ”でした。。。

昔はラジオもテレビもなく、媒体は人の語る言葉だけです。何度もせがんで語ってもらったものです。



どろぼうかつかにとっても、孫の「熱っつい雨」は鮮明な記憶になったことでしょう。


畠山重篤


カキじいさんもこの暑さには「まいった、まいった」です