漁師の絵心

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今年も押し迫り、慌てて年賀状を書いている人も多いことでしょう。

ほとんど印刷されたものが多いのですが、嬉しいのはやっぱり手書きの絵の入ったものですね。

カキじいさんは子どもの頃から絵が全く下手で、上手な人にずっと憧れを持っていました。

ところが、カキママの血筋でしょうか、孫たちは四人そろって絵がうまいのです。

特に長男紘一(9才)はセンス抜群です。

線が素晴らしく、一筆でスーッと描けるのです。消しゴムを使うことなどありません。

カキじいさんがエッセイを連載している水産誌の挿絵を今年一月から描かせているのですが、思いのほか好評のようです。


先月、北海道函館のロシア語学校に今年入学したカキじいさんの弟、通称ノンちゃん(おんちゃん[=おじさん]がなまって)が、「子供たちに活きた教材を送るから!」と、活きたタラバガニを送ってくれました。

子供たちは「活きた教材」をクリオネのことだと思っていたらしく、カキパパが冗談で言っていたタラバガニが本当に届いたので、みんなびっくり!。

カキパパは仕事で使ういろいろな水槽を持っていますから、水温を5℃に保っている水槽もあって、その中に届いた「教材」を入れてみたのです。

北の生き物ですから低温であれば生きるのですね。魚やホタテの切り身を餌にやるとバリバリ食べるではありませんか。

ノンちゃんに聞くと、「今までタラバガニを買ったお客さんの中で、活かしたという話は聞いたことがない!」と、カニ屋のおやじさんが言っていたそうです。


生き物が大好きで、よく観察して描くのが大好きな孫の紘一は、いつものようにスラスラと鉛筆を走らせ始めました。

色付けして、あっという間に見事なタラバガニの絵の出来上がりです。

構図といい、カニの表情といい、見事なものです。

“絵心のある漁師”、、、とてもいいですね。

福井県若狭湾にそんな漁師がいて、「若狭の漁師、四季の魚ぐらし」という本が出ています。

漁を終えると毎日キャンバスに向かう生活だそうです。

十年後、フランス、ブルターニュの海辺で「牡蠣」の絵を描いている孫の姿などを思い浮かべるのは、カキじいさんの勝手でしょうか(笑)。

送ってくれたノンちゃんも、きっと喜んでくれていることでしょう。



でも、「カーニー」と名付けたタラバガニに餌をやっている子供たちの姿を見て、カキママは複雑な顔をしています。

お正月に、、、と企んでいるようです。

畠山重篤


“画伯”は今日もキャンバスに向かいます(笑)



若狭の漁師、四季の魚ぐらし

若狭の漁師、四季の魚ぐらし