クリスマスのできごと

にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ





今年もあっという間にクリスマスの朝を迎えてしまいました。


カキやホタテの養殖漁業にとって、一年で最も注文が多い時期です。カキパパやカキママは朝早くから夕方も遅くまで働いています。

今年初めの一月末にはチリ地震津波があり、養殖施設に大きな被害も受けました。

「今年はサンタクロースは来ないかもしれないね、、、。」

小学校上級生のお姉ちゃんの孫が弟たちに言っているのを聞いていました。小さな弟たちはとても心配顔です。



さあ、クリスマスイヴ。

赤鼻のトナカイやあわてんぼうのサンタクロースを歌うと、鳥モモを食べてケーキのロウソクに火を灯します。

窓の外には3mほどの杉の木(笑)をイルミネーションで飾ったクリスマスツリー。玄関には山ぶどうのツルで作った大きなリースも。

お腹を空かせて海から帰ってきたカキパパは、鳥モモをあっという間に四本もペロリ。

「これが本当の“二羽”鳥だ!」と言って、みんなを笑わせます。

ケーキを食べ終え、ふと窓の外を見るとグッドタイミングで雪が、、、。

「雪が降ってきたから、ソリに乗ってきっとサンタクロースが来るよ!」と、心配そうな子供たちにカキママが優しく話しかけるのを見て、カキじいさんはやっと安心したのでした。



毎年クリスマスが近づくと、カキパパの知り合いからクリスマスのための料理の案内が届きます。

宇都宮市オーヴェルジュ、オトワレストランというフランス料理店を経営している音羽(おとわ)さんというシェフからです。

二十年も前に、カキパパは音羽さんに案内されてヨーロッパ食べ歩きをしました。そんな経験からか、カキパパの舌はなかなか厳しいものがあります。

今年の音羽さんのおすすめは、音羽シェフの自慢のレシピで作った、ドイツの「シュトーレン」という伝統的なお菓子だそうです。

ドイツではアドヴェント待降節)の間、このお菓子を毎日薄く切って少しずつ食べ、クリスマスの日に食べ終えるようにするのです。

ナッツやフルーツがいっぱい入った焼き菓子で、バターと白いお砂糖がまぶしてあります。

時間をかけて食べることでクリスマスを楽しみにする気持ちが増しますし、時間が経つにつれてバターとお砂糖がなじんでとても美味しくなってゆきます。

シュトーレンが四本届いたので、カキママが一本だけ出して、大事に大事に食べさせていました。

ところが、最後の一週間に残りの三本がいつの間にか無くなっていたのです。


犯人は、、、カキパパでした。

「本場ヨーロッパの味を知っているのは俺だけ。味の分からん人たちに食べさせるのはもったいない!」、、、ですって。



いろいろなことがありましたが、二十五日の朝、外は銀世界です。

孫たちがプレゼントをそれぞれ持って、階段を駆け下りてきました。

天体の好きなお姉ちゃんには家庭版のプラネタリウム、生き物が大好きな上のお兄ちゃんにはちっちゃな顕微鏡、自分たち専用の遊び場所が欲しい二人の小さな弟たちにはそれぞれ、とても丈夫な段ボールで組み立てる椅子と机のセットでした。


さすがはサンタクロース。よく考えてプレゼントを選んでいます。

カキじいさんはすっかり感心してしまいました。


カキパパ、カキママにとっても、孫たちにとってもきっと人生で最も幸せな一日だったことでしょう。

畠山重篤



庭の“杉の木”ツリーにも雪がしんしんと降り積もります。