「ガマの油」

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我が家の三頭の愛犬たち(勝手にオイスタードッグスと呼んでいますが)は、秋の深まりと共に、食欲も旺盛で元気です。


ローリーは相変わらず朝晩のチャイム(ポール・モーリアドボルザーク)に呼応して、哀愁を帯びたソロを聞かせています。(2010/9/16「変声期」)  分かれた七匹の兄弟姉妹に思いを馳せているのかもしれません。


先日、散歩に連れて行ったら、ちょっとした事件がありました。

ヒキガエルがノソリ、ノソリと草陰から出てきたのです。

父ロッキーは知らん顔で通り過ぎました。母ハナはフガフガと匂いを嗅いでいましたが、お気に召さなかったのか顔をそむけ離れました。


問題は、お転婆ローリーです。


興味深げにしばらく見ていましたが、何を思ったのか、パクリッと口の中に入れてしまったのです。

焦げ茶色なのでチョコレートケーキの味がすると思ったのでしょうか?

でも、目を白黒させると、あわてて大きな口を開け、吐き出したのです。
そして、トホホホホ、、、という顔になり、大粒の涙さえ浮かべているではありませんか。

よほど不味かったのか、口の中が刺激的だったのでしょう。


それもそのはず、ヒキガエルは皮膚の表面にツブツブがあって、毒のある分泌液を出すことは昔から知られています。

筑波山の「ガマの油売り」は有名ですよね。四面鏡張りの箱の中にヒキガエルを入れておくと、自分の姿のあまりの醜さにストレスを感じて、分泌液をどんどん出すというのです。

毒は使い方を変えると薬に転じますので、軟膏にして傷薬に売っているのですね。


もちろんカキじいさんは、ヒキガエルを舐めたことはありませんが、苦いのか、辛いのか、ピクピクするのか、想像したくない味ですね。

蛇が、アマガエルやトノサマガエルを食べているのは見たことがありますが、ヒキガエルには絶対近づきません。


ローリーはとてもいい経験をしたのですね。

もしかして、毒で声が出なくなるのでは!?、、、と心配しましたが、どうやら大丈夫なようです。夕方のドボルザークに合わせて、いつものソプラノを響かせていました。



「ローリー・カエル事件」の一部始終をじっと見ていた孫たちも、きっと感じ取ったはずです。
見知らぬものを食べるときは、十分に注意すること、、、と。

畠山重篤



どちらさま?(お客様とハナ、舞根)