第五回「大工の飲み口」『純米吟醸酒 こしのひかり』(福井県福井市美川酒造場)「これは誰が呑んでも旨いやろ。正に旨口。あって言う間に二人で一升やね。」

季節は晩秋。昼間の暖かさは霜月を忘れさせるほどですが、さすがに朝晩の冷え込みは冬の気配。月も凍えて、舞根湾の漣に震えます。明日の深夜からはホタテの稚貝の受け入れ。寝ずの秋の夜が続きます。

津波で枯れかかった杉の大木を切り出し、私達の海辺の製材所に運びます。木回しでせーの!で転がり落とすと、ずしんっと地響き、年輪の重みを感じます。材は全て舞根の木。どんなものに生まれ変わらせようか。