書評委員の役得

読売新聞の書評委員になって二年目を迎えました。

政治学者、経済学者、社会学者、宇宙物理学者、ユーラシア史家、比較文学者、万葉学者、西洋美術史家、作家、女優、漫画家、ノンフィクション作家、評論家、エッセイスト、などのいろいろな肩書きのなかでも、「カキ養殖業」という肩書きは何だか不思議な響きのようです。講演会や会議などであちこちに出向きますと、書評を楽しく読んでますよっ!と声をかけられる機会が多くなってきました。でも、残念なのは、めったに本職のカキの本が出てこないことです。


書評委員の役得は「検討本」と称して、自分の読みたい本を家に送ってもらえることです。

カキじいさんは魚、虫、鳥、動物の図鑑、地図なども検討本にさせてもらっています。大津波でカキじいさんの海辺の書斎が流されたため、本をすべて失ってしまったためです。


津波の後、待ちに待った新しい書斎がようやくできました。堆く(うずたかく)積まれた大好きな本の山を眺めていたら、「おじいちゃんの目、前よりもっと細くなってきたねっ!」とは、とった魚をバケツに入れて自慢げに見せに来る孫の談。

書評を書くペンの走りも上々です。


畠山重篤