孫の言い分

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カキじいさんは年末から風邪気味だったので、寒い所にいるタラバガニの「カーニー」と面会できずにいました。


今朝、餌をやる小学三年生の孫の紘一に引率されて、初面会です。

カーニーは「個室」にいました。いわば「冷暖房完備のホテル生活」のようなものです。

マニアックなカキパパの水質管理は万全で、カーニーはどんなにか快適なことでしょう。

カーニーは安心しきったのか警戒感が全くなく、残り少なくなった鰤(ブリ)の骨付き肉を水中に落とすと、すぐさま上手にハサミで口に運び、ムシャムシャと食べ始めました。

紘一に問うと、昨日あげた切り身は全く無くなっているということです。


水槽の中を闊歩しているカーニーを見て、びっくりしました。足が片側3本、ハサミ1本、両方全部で8本です。

この辺で獲れる毛ガニは足が4本、ハサミ1本、全部で10本です。

「カーニーの足、パパか誰かが内緒で食べたんじゃないか?」と紘一に聞くと、ケロリとして答えます。

「タラバガニはカニじゃなくてヤドカリの仲間なんだよ、おじいちゃん。カーニーも見ただけじゃ分からないけど、お腹の中にちっちゃな足が2本隠れているんだよ。ほらっ、あそこっ!」

孫の指差すあたりをのぞくと、大事そうに卵を抱いているカーニーが、お腹の中で「ヘラ」のような小さな足をパタパタとさせているではありませんか。

「ほー!」

「ねっ、全部で10本でしょ!でも、タラバガニは食べる足とハサミは全部で8本。家は10人家族だから、二匹買わないと一人1本ずつ食べられないんだよ。不公平だから、だめだよねえ、おじいちゃん、、、。」

「うーん、、、そうか、、、。」

どうやらカーニーを食べちゃいけない理由を、一生懸命わたしに説明していたようです(笑)。




これから水温が一年で最も低くなる時期ですので、この小部屋の主もますます元気になることでしょう。

しばらくはカーニーとの語らいが続きそうです。

畠山重篤


一年で最も寒さの厳しい季節がやって来ます

(唐桑瀬戸の夜明け前、左:唐桑半島、右:大島)