Essay

ふくろうのお母さん

広島県神石町で開かれた森川海の繋がりの勉強会※でもう一つの心温まる出会いがありました。「ふくろうのお母さん」こと、見永豊子さんです。 ご自宅に案内してもらいました。狭く曲がりくねった杉木立の中をしばらく走ると、ポッカリ空間が広がり、雑木林を…

鯛の森

十二月初め、広島、下関、高知県四万十町と、旅が続きました。どこに行っても、まるで待っていたかのような出会いがあり、いつも不思議に思っているのです。 まずは広島県神石町に行きました。新幹線福山駅から車で一時間半、中国山地に分け入った地です。帝…

子供たちの牡蠣

今朝、カキじいさんの母校、唐桑小学校の六年生が大きく育てた牡蠣を四百二十個、船で運んできました。さすがは我が母校、牡蠣の養殖筏(いかだ)を持っているのです。漁業協同組合の青年部の諸君がお世話をして、体験学習のための筏を設置してくれたのです。…

「コキーユ・サンジャック」

牡蠣の出荷だけでも多忙なシーズンなのですが、もう一つ多忙な要因が重なりました。「帆立貝の子ども」が届いているからです。 北海道の日本海側、石狩川が注ぐ小樽の海で育ててもらっている帆立です。子どもと言っても昨年の春に生まれたものを一年育てたも…

鉄と宇宙と牡蠣

この夏、ある会で、宇宙から奇跡の生還を果たした「はやぶさ」のプロジェクトマネージャー川口淳一郎先生と同席する機会を得ました。 三陸の牡蠣漁師の私と、時代の最先端を行く宇宙工科学研究者が講師として招かれるとは、まったく前代未聞の事と思われたよ…

教室に翻った大漁旗

八月十八日に「海なし県の先生のため息」というタイトルで記しました。岐阜市立陽南中学校の社会科の先生が舞根(もうね)湾に取材に来られたお話です。今春、「海なし県」岐阜で初めて「豊かな海づくり大会」が開催されたこともあり、公開研究授業のテーマ…

あれから四十年、、、

十一月は社会人講師が大学に講義に招かれるシーズンです。 カキじいさんの出番も多くなってきました。東北公益文科大学(酒田市)、岩手大学、石巻専修大学、京都大学、国学院大学、広島大学などなど、、、と、続きます。これでもカキじいさんの講義は人気が…

小田原と鰤

十月二十日から二週間、大学での講義やシンポジウムの出席などで、関東、九州、北陸を駆け巡っていました。 まず始めは、小田原でローカルサミットというイベントです。三年前から始まったもので、様々な経験、体験を持つたくさんの“変人”達(失礼、、、)が…

「あとがき」より

[:H200:W250:right]子供たちに向けて書かれた森、川、海、そして人のつながりの解説絵本「漁師さんの森づくり」(講談社)の後書きより、今回は抜粋してお届けします。子どもにも読める簡易な文章で綴っています。名古屋でのCOP10が閉会し、子供たちと…

海の哲学者

今朝は最低気温が10℃を切り、三陸の海辺は晩秋の気配です。水温が下がり始めると海の透明度が増し、小魚たちの姿がはっきりと見えてきます。カキじいさんの子供のころの記憶でも、この季節、舞根(もうね)湾には暖流に棲む小魚が回遊してきます。はっきり…

「ガマの油」

我が家の三頭の愛犬たち(勝手にオイスタードッグスと呼んでいますが)は、秋の深まりと共に、食欲も旺盛で元気です。 ローリーは相変わらず朝晩のチャイム(ポール・モーリアとドボルザーク)に呼応して、哀愁を帯びたソロを聞かせています。(2010/9/16「…

森の神と海の神

地表に水満ちるまでの刻想う 杳い時間と誰か呼ぶべき 夜も明けやらぬ気仙沼湾口で、肌を突き刺す冬の季節風を真正面に受けながら、遙か彼方に見え隠れする霊峰室根山に向かって手を合わせている白装束に身を固めた漁民の姿があった。やがて、小船の魚槽(か…

間もなく本格シーズン到来! 「牡蠣〈かき〉」エッセイ・アーカイブ

間もなく牡蠣(かき)の本格シーズン到来です! 生牡蠣を豪快にズズズッとすすり込んで、ワインで後味を追うか!レアに火を入れたアツアツの身を頬張って、汁まですすって味わうか! 、、、と、その前に、今回は「牡蠣」にまつわるエッセイをいくつか選んでみ…

カキじいさん、涙する

今日はカキじいさんにとって、とても嬉しいことがありました。十月十一日の夜九時からNHKテレビで放送された「NHKスペシャル 日本列島 奇跡の大自然 第2集 海 豊かな命の物語」 に登場した研究者から、手紙が届いたのです。北海道大学低温科学研究所 …

ブルターニュからの客人

フランスのブルターニュ地方から四人のお客さんが水山養殖場を訪れました。通訳兼ガイドは東京ブルターニュ事務所のラミ・レジスさんという若い男性です。奥さんは日本人だそうです。中年の男性三人はブルターニュの牡蠣生産者、もう一人はイフレメール(フ…

「鉄は地球を救うか?」

前回、三陸沖が世界三大漁場であることのメカニズムをご紹介しました。 ところが、丁度それを書いている夜に、NHKTVで「日本列島 奇跡の海 新発見 知床流氷の謎」が放映されたのです。なんたるタイミング! 九時からのゴールデンタイムでしたのでご覧にな…

秋の味覚と「鉄」のおはなし

秋が深まって来て、気仙沼魚市場はサンマ、カツオ、サバ、メカジキなどの水揚げで活気づいています。十月八日の一日間だけで、サンマ650トン、カツオ220トン、サバ170トン、メカジキ460匹、メバチマグロ30匹が水揚げされました。漁場は三陸沖…

金木犀の香り

初めて中秋の京都を訪ねたのは何時だったでしょう。カキじいさんも年と共に老い耄(ぼ)れてきて、記憶が怪しくなってきました。京都大学や国際日本文化研究センター(日文研) に関わるようになり、年に何度か京都を訪れるようになりましたが、一番好きな季…

二学期は森の学習(2/2)

聞き入る子供たちに、カキじいさんは橅(ブナ)の木の話を続けます。 「ブナって漢字では「橅」(木へんに無)と書くんだ。 『役立たずの木』っていう意味だよ。」 「エーーー!なんでー?!」 「ブナを伐って薪(まき)にするために割ろうとすると、これがとって…

二学期は森の学習(1/2)

九月末、町内の小学校五年生の「ふるさと学習会」で、子供たちに話をして下さい、と頼まれました。 一学期には水山養殖場で海の学習をしたので、二学期は室根山から海を見ながら、森川海の関わりにつて学びたいというのです。 室根山は気仙沼地方では一番高…

科学者と詩人

二年前の平成二十年、「森は海の恋人 植樹祭」がニ十周年を迎えました。記念の小冊子を作ったのですが、安田喜憲先生(「米と魚の文明」ご参照 )がメッセージを寄せて下さいました。全文をご紹介したいと思います。 「科学者には詩人の心が必要である。科学…

米と魚の文明

国際日本文化研究センター教授、安田喜憲先生との出会い、そして先生の研究について、もう少し紹介したいと思います。 湖底の泥をボーリングすると、年縞(ねんこう)が形成されていることは前回書きました。 年縞には、花粉のほかに火山灰、洪水時の土砂、…

百日紅は語る

この夏、ふと気が付いたことがあります。今年は日本列島、西に行っても東に行っても、百日紅(さるすべり)が見事に咲いているのです。 我が家の庭先の木も、九月になってやっと淡いピンクの花を咲かせました。もともとこの木は中国南部の暖かいところの木と…

さんまは気仙沼に限る!

今年で十五年目を迎えた「目黒のさんま祭」を楽しんできました。 山手線目黒駅を降り、改札を出ると駅員さんが案内に立っていました。地域を挙げてのすごいサービスですね。 だらだらとした権之助坂を下って行きますと沢山の幟(のぼり)が並んでいて、赤で…

「わくわく」

この夏休み、京大ポケットセミナー で水山養殖場 を訪れた学生さんたちから感想文が届き始めました。 男子学生顔負けで木を植えていた林学のOさんにとっても、衝撃的な体験だったようです。子どもの頃から外で遊ぶことがなく、虫や魚に触れることは殆どなか…

「変声期」

カキじいさんの家に犬がやってきたのは六十年も前のことです。「春になったら仔っこ犬(こっこいぬ)をもらってけっからな」とカキひいじいさんが約束してくれたのです。やってきた仔犬は、両手の中に収まるような、白い小さな雌犬でした。女の子なのにどう…

二十歳になった「子供たち」

今日(9月11日)はカキじいさんにとって、とても嬉しいことがありました。東京都足立区立第七中学校の卒業生十八人と先生二人が舞根湾を訪ねてくれたのです。七年前、修学旅行で気仙沼を訪れ、水山養殖場で体験学習をしました。気仙沼湾へと注ぐ大川上流の岩…

ハモ釣り

カキじいさんの夏の楽しみは「ハモ」釣りです。三陸では穴子(あなご)のことを「ハモ」や「ハム」と言います。京都で有名な「鱧(はも)」とは別物を指します。この時期の「はむ」はびっちりと脂がのり、三陸の風物詩となっています。 まだ小学校に入る前か…

京大ポケットセミナーにて(後編)

頭で考えていただけでは本質には迫れません。それが自然科学だと思います。 まずは海に親しんでもらおうと、あずさ丸に乗船させ、櫓(ろ)を漕がせることにしました。 京都から取り寄せた柿渋を全身にまとって、お化粧直しをしたばかりの船体は水面の光を受…

京大ポケットセミナーにて(前編)

八月末、今年も京都大学ポケットセミナーの学生諸君が舞根湾にやって来ました。京都大学では少人数の新入生の学生グループに教官が同行してフィールドワークをするシステムがあります。題して「ポケゼミ」。 七年前、京都大学では林学から水産学までを統合し…